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東京都八王子に本社を構える三幸社(SANKOSHA)は業務用ドライクリーニングと洗濯関係の機械・装置で世界的メーカーでランドリー仕上機・ドライ仕上機・タタミ包装機の開発と製造販売で日本と北米などでトップシェアを誇っている。トップシェアと言っても、大量生産ではなくニッチな市場を狙った少数多品種生産で、大手が参入しにくい業界とも言える。2011年末にアマタシティ・チョンブリ工業団地に進出した三幸社タイランドの山下誠社長によれば「昨年2月までの5年間に生産を3倍に伸ばした。従業員も63人(現在は41人)いて、こんなに儲かっていいのかと思うほど利益が出ていた」ことから「タイ工場は近く売り上げで日本の本社を追い抜く予定だった」。だが、タイ通貨であるバーツ高が進み昨年4月から一気に天国から地獄に落とされてしまった。バーツ建(本社の為替差損)でタイ工場から出荷するより日本で製造したコストの方が断然安くなり、日本向けの生産と輸出がゼロになってしまった。しかし山下社長は現在の低迷から抜け出せる新たな取り組みを開始した。それは三幸社が権利を保有している米国の有名ブランドである「Ajax(エイジャックス)」の名を使った風圧を利用する「バキュームフロー」という染み抜き機械などをAjax機としてタイで再設計、生産して廉価で頑丈な製品としてタイ工場で生産し主に中国市場、タイ市場を狙う。
三幸社タイランドの技術系社長である山下誠社長はイタリアの同業大手であるポニー社から大きな刺激を得てきた。ポニー社の同様製品の方が三幸社製品より断然安く売られていることにショックを受けた山下社長が「どうしてこんなに安く製造できるのか」とポニー社製品を取り寄せて分解して調べてみたところ、過剰品質を徹底的に排除していることが三幸社製より断然安く生産できる原因だと山下社長は理解した。
三幸社の海外進出はかねて積極的で、2006年6月には米国の同業界で3大メーカーの1社として機械の頑丈さで定評があり米国のホテル業界向けなどに圧倒的な納入実績があるAjaxをM&Aで取得している。米国フロリダの米国社からも経営権と図面を手に入れている。三幸社は1993年4月には米国イリノイ州にシカゴ支店を開設し1995年9月に販売会社である現地法人の三幸社USAを構えている。
タイ工場にエンジニアリング部門を2011年9月に設置、ドライクリーニングとランドリー機械および設備の設計開発を開始しているが、すべての製品がローカルデザインでローカル化した生産。機械と部品を製造するメーカーとしてタイ工業省の投資委員会(BOI)から2012年4月に奨励企業として認可され新モデルもタイ工場で継続的に開発、生産、発売している。当初の三幸社タイランドでは生産した全量を日本に輸出(3国間貿易)していたが、国際貿易も行えるステータスを2017年8月にBOIから得たことから2018年1月にタイ市場向け販売も開始した。
三幸社タイランドの現在の従業員数は41人で内女性は18人。全員を月200時間勤務としている。これまでにタイ人のマネージャーはセールス・コーディネーターの女性1人と、組み立てを担当する2人のタイ人男性を幹部に育てた。山下社長は25歳から28歳の2人の大卒のタイ人若手設計者に大きな期待をしている。「Ajax」ブランドを使用する風圧を利用した染み抜き機、圧入機はタイ人スタッフだけで設計を終えたと山下社長は喜ぶ。「彼らはたった3か月間で電気回路も含めて4機種の設計をこなした。素直でセンスと技術力があり、設計の速さも日本より上」と評価している。安川電機のサーボモーターを採用した圧入機(サーボプレス)はシステムも含めタイ人の設計者だけで考案、製造した。「タイで役員にしたいと考えているタイ人はすでにいる。将来のタイでの経営は全面的にタイ人に任せられる時代が来る」と山下社長は予感している。
「タイでは華人系の代理店経由でバンコクのマリオットホテルなど8ホテルに当社のランドリー、ドライクリーニング用プレス機器が採用されている。他の大手ホテルも近く採用してもらえるよう交渉が最終段階」と山下社長。
「タイ人はアイロンをかけるのは、バイ菌を殺すためと考えている。だからパンツまでアイロンかけしている。部屋の中で干さず、天日に干すのも害虫の卵などを殺すためと考えている」と観察してきた山下社長は「タイはアイロン関係を売りやすい市場」と見ている。
(アジア・ジャーナリスト 松田健)
(2019年8月27日 8:35)