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近年、急速に台頭しているベトナムのIT(情報技術)企業であるIDEAグループは日本の大手企業のIT人材不足をカバーしているだけでなく、6軸の産業用ロボットやAGV(自動運送ロボット)、3Dプリンターなどの開発、製造販売などでも注目されている純ベトナム企業。同グループのチュンCEO(Do Hoang Trung, President CEO)は筆者に対し、「2020年から21年の間にタイに進出し、2022年にはチョンブリ県にタイ工場を稼働する」計画を明らかにした。チュンCEOは初のタイ進出について「設計業務支援(アウトソーシング)、部品や治具など生産設備の設計製作、ベトナムの自社で製造しているAGVやロボットなどの販売、設計人材育成と派遣を段階的に進めていきたい」と明らかにした。
同社は日本の東証1部上場クラスを主な顧客として2010年に創業、部品図製作で始まりその後は設計にとどまらずに高精度部品や自動機、AGVの開発から製造も手掛け、同社が開発製造した6軸ロボットはすでに日本の日本企業への納入を続けているなど、経営の多角化にも成功してきた。日本の大手企業のIT人材不足を埋める一環として創業当初から数多く手掛けてきた部品図製作とは1つずつの部品を実際に製造するために不可欠なもので、組立図から「部品バラシ」の作業で部品図を作る部署には現在90人が従事している現場をチュンCEO自身の案内によりこのほど同社のホーチミン本社で見学させてもらった。
チュンCEOは1973年2月にベトナム中部生まれで現在46歳の若手オーナー経営者。IDEAグループではこれまでに約180社の顧客を抱えているが、その全社が日系企業で、タイや米国に進出している日系企業も含まれている。日本国内の顧客は135社、ベトナム国内の日系企業が37社、タイや米国に進出している日系企業3社など。IDEAの会社案内には日本電産、不二越、ミスミ、日産テクノ、日新電機などの顧客名が掲載されている。
IDEAグループのチュンCEO兼社長は名門のホーチミン工科大学を卒業後、日本に3年間留学してベトナムに2003年に帰国、2010年から日系企業向けにCAD図面の作成と設計業務をサポートする事業をホーチミンで開始した。図面のトレース、3次元モデリング、「部品バラシ」受託から始め、機械設計、解析、シミュレーションの作成、部品切削加工、設備設計製作へと業務を広げた。
タイもドイツに倣ってIT産業育成で将来の先進国入りを目指して第4次産業革命のタイ版「タイランド4.0」を国策に掲げ取り組んでいるが、人材育成も含めてその多くは中国を中心とする外国に依存している。タイは2019年にASEAN議長国を務めているなどASEANでのリーダーぶりも発揮している一方、IT分野では人材面などでIDEAグループに対抗できそうなタイ企業を筆者は知らない。
ベトナムにはシステム開発とソフト開発で急成長したIT最大手として純ベトナム企業であるFPTコーポレーションもある。FPTでは収益の半分以上を日本企業から稼ぎ、同社の日本法人には1,000人以上の日本語堪能なベトナム人エンジニアが働いて日本企業のIT人材不足を日本で補っている。チュオン・ザー・ビン会長にかつてインタビューしたとき、同会長は明治時代後半にベトナムでフランスの植民地支配から脱するために日本に学ぶ「東遊(ドンズー)運動」が起きた歴史について語っていたことが忘れられない。
(アジア・ジャーナリスト 松田健)
(2020年1月10日 8:36)